はじまりは、いつもの場所から。
はじめまして。
「サンドイッチ・ファクトリー」の店主です。
突然ですが皆さんは、お店のどこに座るのが好きですか?
大きな窓から街の景色が見える明るい席。 あるいは、スタッフのきびきびとした動きが感じられるカウンターの近く。
人それぞれ、その日の気分に馴染む「お気に入りの場所」があるはずです。
私がこの『サンドイッチ・ファクトリー』で一番好きなのは、いちばん奥の、壁とアップライトピアノに囲まれた、小さな隅っこの席です。
店主という立場でありながら、私は普段、表に立ってお客様をお迎えすることはほとんどありません。 けれど、時折この隅っこの席に腰を下ろして、お店の「音」に耳を澄ませることがあります。
スピーカーから流れるBGMの向こう側から、 サンドイッチを頬張るお客さまの、楽しげな「ケラケラ」という笑い声。 大切な誰かと向き合って、静かに紡がれる「ヒソヒソ」という秘密の話。 小さなお子さまの弾むような声や、ご年配の方が一息つく穏やかな気配。
三方をピアノと壁に守られたこの場所は、そんな店内の幸せな合奏(アンサンブル)をいちばん贅沢に聴くことができる、私にとっての特等席なのです。
サンドイッチの断面がどれほど美しく整っていても、そこに「人の気配」という温かなスパイスがなければ、お店はただの箱になってしまう。 老若男女、いろんな方がこの場所で混じり合い、壁のないあたたかな空気が流れているのを感じるたび、私はこの隅っこで、深く、深く、安心するのです。
今日から少しずつ、この場所で見つけた小さな景色を「ひとり言」として綴ってみようと思います。
レシピには書ききれない、 けれどこの場所には確かに存在している、おいしい日常の話。
また明日も、いつもの場所でお待ちしています。
